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個人再生

(1)個人再生とは?

個人再生は、裁判所の監督の下で、債権者の権利行使を制約しつつ、個人(自然人)である債務者の経済生活の再生を簡易迅速に図るための制度であります。

民事再生法の特則として設けられており、個人版民事再生ともいわれています。個人再生は、平成13年4月から施行された新しい制度です。

個人再生には、小規模個人再生・給与所得者等再生の2種類の手続が設けられています。

 

【小規模個人再生】

小規模個人再生とは、将来において継続的収入の見込がある個人で無担保の負債が5,000万円以下の債務者が利用できる個人再生の手続です(民再221条1項)。

小規模個人再生は、債務者がその収入を弁済源資として全債務のうち一定の金額を分割で弁済する再生計画案を作成した場合に、再生計画案に対する債権者の決議と裁判所の認可を条件として、再生計画に基づく弁済を履行することによって残債務を免除する、という手続です。

 

【給与所得者等再生】

これに対して、給与所得者等再生とは、小規模個人再生の対象となる債務者のうち、一般のサラリーマンのように「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込がある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるもの」が利用できる個人再生の手続です(民再239条1項)。

給与所得者等再生は、小規模個人再生よりも、さらに簡素化された手続です。この手続では、可処分所得の2年分以上の金額を弁済に充てること(可処分所得要件。民再241条2項7号)を条件として、再生計画案に対する債権者の決議の省略が認められています(民再240条参照)。

ただし、可処分所得要件が意外と厳しいためか、給与所得者等再生よりも小規模個人再生を選択する傾向が見られるようです。なお、給与所得者であっても小規模個人再生を選択することは認められています。

 

【住宅資金貸付債権に関する特則】

このほか、住宅ローンがある場合には、住宅資金貸付債権に関する特則(民再196条以下)の適用を受けることもできます。

住宅資金貸付債権に関する特則は、住宅ローンを抱えて経済的破綻に瀕した個人債務者が住宅を手放さずに生活の再建を果たすことができるようにするため再生計画において住宅ローンの弁済の繰り延べを行うことを認める、という手続です。

この特則は、小規模個人再生・給与所得者等再生のどちらの個人再生手続でも利用することができます。ただし、保証会社が代位弁済をした後6ヶ月を経過すると、この特則を利用することはできなくなります(民再198条2項)。

 

(2)個人再生のメリット

(ア)元本のカット

個人再生では、利息・損害金はもちろんのこと、元本のカットが制度上認めらています。

(イ)差押え等の停止・取消し

個人再生では、給与の差押え等の法的手段も排除して手続きを進めることができます。

(ウ)競売手続きの中止

個人再生では、住宅資金貸付債権に関する特則の適用を受けることができる場合には、自宅について競売を申し立てられたとしても、無担保で裁判所に競売手続の中止命令を出してもらうことが可能です(民再197条)。

(エ)破産による資格制限を回避することができます。

 

(3)個人再生における注意点

(ア)対象者の制限

個人再生では、制度を利用することのできる対象者の要件が法定されています。したがって、要件を欠く場合には、個人再生を利用することができません。

個人再生では、まず、対象者として「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」ことが要件とされています。(民再221条1項・239条1項)。また、無担保の負債が5,000万円を超えないことも要件とされています。(民再221条1項)

 

(イ)弁済方法の決定

個人再生では、モラルハザード防止という観点から、弁済額・弁済方法が法定されています。

まず、個人再生では、最低弁済額が法定されています。すなわち、個人再生の最低弁済額は、無担保の再生債権の総額20%(ただし上限は300万円)または100万円のいずれか多い額以上でなければなりません(最低弁済額要件。民再231条2項4号。ただし、再生債権の総額が3,000万円を超える場合にあっては同項3号、民再241条2項5号)。

そして、給与所得者等再生では、最低弁済額の要件がさらに加重され、債務者の収入や扶養家族の構成等を基礎に生活保護基準を参考にして定める生活費・税・社会保険料を収入額から控除した額を可処分所得とし、この可処分所得の2年分以上の額でなければなりません(可処分所得要件。民再241条2項7号)。

また、個人再生では、再生計画の弁済総額と、破産した場合に受け取るべき配当の総額とを比較して、前者が下回っている場合には、再生計画は認可されない建前となっています(清算価値保障要件。民再174条2項4号)。これは、個人再生では、債権者のために、債務者が破産した場合よりも多くの債権回収を図ることができるように保障しようとする趣旨です。したがって、破産の配当源資となる資産が相当程度ある場合には、個人再生は使いにくくなります。

さらに、個人再生では、最長弁済期間が定められています。すなわち、個人再生の弁済期間は、原則として3年、特別の事情がある場合であっても5年を超えない期間であることが法定されています(民再229条2項2号・244条)。

 

(ウ)相当額の費用

個人再生は、手続が煩雑で長期間要する事から費用も自己破産・任意整理と比べて多額とならざるを得ません。すなわち、依頼する弁護士に対する報酬のほか、裁判所に納付する申立手数料・官報公告費用・郵便切手や、裁判所が個人再生委員をつける場合にはその報酬が必要となります。

 

(エ)財産管理処分権の制限

個人再生では、裁判所に対して財産目録を提出することにより財産開示を行わなければなりません(民再124条2項・228条)。そして、開始決定後、債務者の財産管理処分権は制限されます(民再41条・38条2項)。もし後になって債務者が財産を隠匿したことが判明したような場合には、再生手続が廃止される(民再237条2項・244条)だけではなく、10年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金という重い刑事罰(民再255条1項)を科される危険性もあります。

 

(オ)債権者の決議

個人再生では、任意整理のように債権者の個別の合意は必要ありません。しかし、小規模個人再生では、再生計画案について債権者の消極的同意による決議が必要なので、再生計画案に同意しない旨を書面で回答した債権者が頭数で半数以上又は金額で2分の1を超えた場合には再生計画は不認可となってしまいます(民再237条1項)。したがって、小規模個人再生は、大口債権者が強硬に反対しているような場合には使えない、ということになります。ただし、給与所得者等再生では、債権者の決議は不要です(民再244条参照)。

 

(カ)職権破産

個人再生は、再生手続がうまくいかず終了した場合には、裁判所が職権で破産手続へ移行させることができる制度になっています(民再250条1項)。個人再生手続では、制度上、破産になってしまう危険があります。

 

 

 

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